Grave Zero Corsswind作
 とある森林、世界遺産でも登録されるんじゃないかと言うほど手の付けられていないこの森林ではたびたび子供の行方不明者が出ると言われていた。親から入るなと言われるのに子ども達が入る理由は簡単、手つかずの森だから昆虫の宝庫(まぁたまに山に生息する野生動物も顔を出すのだが、そんなことはどうでもいいか)……そんな森林にまた一人の少年が迷い込んできた。
「あれ、ここさっきも通ったような……」
夏休みで東京から遊びに来た少年は従兄弟と昆虫採集のためにこの森に入った、だがはぐれてしまい途方に暮れいていたのだ。
「どうしよう、早く帰らないと怒られる……」
 まだ午後2時頃だが、このまま迷い続けると確実に帰れなくなる。少年は焦っていた。だが歩けば歩くほど獣道に迷い込み泥沼にはまっていた。

 しばらくして少年は草原に出た、草原と言っても森の真ん中にぽかんとある少し不自然な草原だった。その真ん中に少年は荒廃した教会を見つけた。少年は走って中に入ったが木造の建物は半分以上腐っていてさわっただけで崩れてしまった。誰もいそうにないのでこの場から離れようとした。
「……ん?」
 何処からか鈴の音がした。鈴の音が珍しいわけではなかったが、少年にはこの鈴の音がやたらに耳に残った。その音をたどり教会の裏に回った。

 教会の裏に27の墓があった。簡易的な墓で土をかぶせ、その上に木製の十字架を立て、名前が彫られているだけだった。まだ真新しく、掘られた年号もすべて2〜3年前の物だった。
「誰?」
 声をかけられ少年は後ろを向いた。そこには死んだ狐を抱えた女の子がいた。
「これって……」
「…墓作るの手伝ってくれない、もし手伝ってくれたらこの森から抜ける近道教えてあげる」
 これは死んだ動物の墓なんだ、少年はそう思った。
「わかったよ、なにすればいい?」
「この仔を持ってくれない」
 そういわれると少年は狐を抱きかかえた。少女は穴を掘り始めた。
「ねぇ、どうして君はこんなことをしてるの?君が全部この墓を?」
「うん」
「優しいんだね」
 少年がそういうと少女は笑いだした。
「違うよ、単なる遊び」
「単なる遊び?」
 少年は疑問に思った、こんな物を作って楽しいのだろうかと……
「疑問に思っているようだから言うけど、実はこの狐ね、私が殺ったの」
 微笑しながら少女はそう言った。
「……君が、どうして?」
「触媒、いやただの材料かな?……私ね友達とゲームしててね、人間を何人獣化させることが出来るかってゲームなの、でもこれで28匹目だから私の勝ちは決定ね」
 少女は笑っていた、その様子はまさに悪魔だった。少年は怖くなった。
「……君は何者?」
「さぁ君に教える必要ないでしょ?」
 彼女は少年の目の前に立った。
「まぁ君が死ぬ訳じゃないから……」
 少女は右手に鈴を持ち、少年に見せつけた。
「嫌だ、嫌だ!」
「じゃあね」
 彼女は鈴を鳴らした。少年は手から狐を手放し、その場に体を丸めてしまった。
「痛い、痛い!」
 身体が痛みだした。当たり前である、骨格が変化し始めたのだ。四つ足になり、尻尾が形成された、少年は泣き出した。身体から人間のモノではない毛が生じた。それとほぼ同時にさっきまで抱えていた狐が変化し初め、少年が狐と化していくにつれて、狐は少年へと姿を変えたのだ。
『……うゎ〜!』
 少年は叫んだ、だがすでに声帯が変化し狐の鳴き声だけが響いた。一声鳴くと少年は元の身体の隣に倒れてしまった。

 

 翌日、少年は目を覚ますとそこはさっきの墓の前だった。さっきの少女はどうやらいないらしい。自分の身体をみた。やはりさっきのは夢ではなく姿は狐と化したままだった。
「……」
 ふと目の前の墓をみた。そこにはかつての自分の名前が彫られていた。
(……もう帰れないよね)
 少年は自分の墓の前で静かに泣いていた。


 完
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